Diary

デザインについて

新作のデザインをする時にいつも思い出すことがある。
 
ちょうど10年前、オリジナルの家具を作って自社製品展開に向けてチャレンジしていた頃、人に誘われてインテリア関係のパーティーに参加した。
 
新作家具の写真をスクラップした手作りの作品ファイルを参加者の方々に見てもらっていると
 
「おいオマエいくつだ?」
 
そう声をかけてきたのは、グレーのセットアップを着た小柄だが妙に迫力がある男性で、ハットの裾からは白くなった長髪がのぞいていた。
 
「33歳です」そう答えると
 
持参した作品ファイルをバラバラと見ながら
 
「まだ若いから教えてやるけどな、オマエがしていることはデザインではない。テーマを持たない出来損ないのアートだ。職人がデザインをすると、作り手の都合ばかりで使い手にとって中身がないことが多いね」
 
「少しでも作り手としての個性を出そうと思って。。」そう答えると間髪入れずに返ってくる。
 
「オマエのは個性ではなく安っぽいエゴだ。安易に奇をてらってデザイナーの本質から逃げてるだけだ」
 
「デザイナーの本質って何ですか?木製家具みたいな古典的なプロダクトデザインなんて、とっくの昔に誰かの手で全部表現されてます」
 
「全てのフレーズは出尽くしていても、それでも自分だけのオリジナリティを探して生み出そうともがくのがデザイナーだ!!作りたい物をただ作ってるだけのオマエはデザインという行為を全く理解していない」
 
「じゃあデザインっていったいなんですか!?」
 
「人を幸せにする以外に何があるんだよ!」
 
文字通り雷を落とされて、真っ暗な頭の中を白い稲妻がバシッと走った。
 
この時のことは今でもデザインをするときに必ず思い出す。
 
「作り手の都合になっていないか、それでも個性は表現できているか、そして誰かを幸せにすることはできるのか」と。
 
松岡

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