cocoda chairに合う収納家具が作りたくてこの半年ずっと考えていた。
椅子に座って本を読んだり酒を呑むなんていうシーンを想像しながら、そのお気に入りたちをしまう収納家具のスケッチを描きまくっていて思った。
やはり収納家具のデザインは厄介だ。と言うか遊び心を取り入れるのがすごく難しい。
扉、引出しの開閉や棚板の上下などの動きがあって、それぞれパーツの精度や金物の性能など制作上の都合を考えていくと、何十枚スケッチを描いても最終的にはやはり平面の板で構成した四角い箱型に着地してしまう。
だから世の中の収納家具はほとんどが四角いのにもうなずける。
そこで、全く別の切り口で考えてみることにした。
通常、収納家具の設計は箱を中心に考えるのだが、今回は脚とフレームで構成する椅子の設計に近い方法で練り直して、平面的ではなく立体感のある造形的な収納家具を目指した。
作り手の都合は無視してこだわりを優先させ、あえて手間と面倒を盛り込んで職人泣かせの設計にしてみる。
そんなふうにして収納家具には珍しい複雑な角度とカーブだらけの図面が完成した。
信頼できるスタッフとチームを組んで製作スタート。
なにせ今まで経験したことのない加工や構造がたくさんで、実際に手を動かして作ってみなければ分からない事だらけ。
やっぱり狙いどおりの職人泣かせは、作業の一つ一つが新鮮でとにかく楽しい。
天板は鉋でシェイプして柔らかみと鋭さを同時に表現し、脚との繋ぎは椅子の脚と笠木の仕上げと同じように刀で削り出して一体感を持たせた。
無垢材に角度をつけて丸くなるようにハギ合わせた扉は、成形合板のツルッとした円ではなく無垢材ならではの角を残した仕上がりにすることで、立体感のある陰影が家具全体のアクセントに。そこに削り出した取手を埋め込む。
そして扉の開閉の仕方や丁番にもこだわり、ゆっくりと閉まるソフトクローズ機能と超アナログな無垢材の木製家具とのギャップ萌えを狙った。
棚ダボは経年変化も楽しめる削り出しの真鍮で、金物を留めるビス一本にも気を使った。
ちょっとしたカウンターとしても使えるように天板トップはH950㎜。収納部分は棚板をセンターに設置した場合、上下共にA4サイズが収まるサイズを確保して、可動棚を上下させたり取り外すことで最大高640㎜まで収納できる。
脚下は、お掃除ロボも通れて掃除がしやすい高さとしている。
職人としてとことんこだわって、新しい試みにずっと緊張しながらも少しづつ形になっていく日々はすごく情熱的で、完成した時はこの楽しさが明日からなくなってしまうのかと少し寂く思えた。
だから、基本設計はこのまま活かしてリビングボードやTVボードなどを新たに加えてシリーズ化することにした。アツく刺激的な毎日をもう少し楽しもうと思う。